筆者がLinuxを導入したきっかけは、かつてのWindows 7のサポート終了だった。このときから、OSの垣根を越えるクロスプラットフォームなオフィス環境を考えていた。
OSがクロスプラットフォームなら、当然アプリもクロスプラットフォームだ。
そこで、Linux、Mac、おまけでWindowsでも使える「今すぐ使ってみたい」アプリ、特に画像・映像編集アプリを紹介していこう。
クロスプラットフォーム=オープンソース=安全
Windows全盛の頃は、アプリ(ソフトと言っていた)の定番といえば、OfficeのWordとExcelだった。まあ、これは今でも定番かもしれないが、ビジネスアプリだ。
世界中の人がこのアプリを使おうと思うたびに、Microsoftにチャリーンとお金が入る、有料のアプリである。有料のOSに加え、この定番アプリでMicrosoftは大儲けした。
現在の筆者のオフィスでは、Mac(会社なのでリース物件)をメインに、Linuxを使用している。
かつてのWindowsはもうない。
そして、OfficeといえばLibreOfficeを使用している。
LibreOfficeといえば、かつてはMS Officeの代替アプリと言われていたが、今やこちらの方が主流とも言えるくらい、世界中、特に、ヨーロッパで多く利用されている。
つい最近の話だが、ドイツのシュレースヴィヒ=ホルシュタイン州では、州政府のシステムをオープンソースのシステム、つまりLinuxへ切り替え、Microsoft OfficeをLibreOfficeへと切り替えると発表された。詳細は、以下ウェブページを翻訳でもして読んでみてほしい。
クロスプラットフォームなアプリであるということは、ほぼオープンソースのアプリであることに等しい。そして、オープンソースであるということは、データが安全に管理されるということだ。
LinuxがWindowやMacよりコンピューターウイルスに狙われにくい点として、
- システムのソースコードが世界中から見ることができ、監視されている
- アプリをインストールするには、管理者権限で行わなければならない
という点が挙げられる。
また、世界中の開発者たちがそれぞれのアプリをより良いものとして、自由に修正を加えることができるので、クローズドな環境よりも良いものができる可能性は十分にある。
だから、クロスプラットフォームで安心なアプリを使おうということだ。
WindowsやMacより魅力的なアプリの数々
実際のところ、最近目にするアプリはWindowsやMac環境でのクローズドなアプリより魅力的で、今すぐにでも使ってみたいと思わせるアプリが多い。
米国の大企業とはいえ、そこにいる開発者だけで作るアプリと、オープンソースで世界中から見ることができるアプリでは、圧倒的な数の差がある。当然、クオリティにも差が出てくるだろう。
例えば、画像編集のGIMP。
以前は、画像編集といえばAdobeのPhotoshop一辺倒だった。そして、OSについては最初はMacのみ、その後Windowsへと広がったが、なぜかLinuxでは使えない。だが、使い勝手と性能を考えれば、もはやGIMPの方が優秀だと筆者は考えている。
これだけのクオリティで、ライセンス料は一切なし、つまり誰でも無料で利用できる。ウェブサイトは英語だが、もちろん日本語環境も揃っている。
3DCGの代表格といえば、Blender。こちらはグラフィックのプロも使用する人気のアプリだ。3Dだけではなく、画像の編集にも使える。
グラフィックツールの代表格はAdobeのIllustoratorだったが、これもオープンソースではInkscapeやKritaが挙げられる。
一方、ダウンロード型アプリではなく、ウェブ上で制作できるオンラインアプリもある。けれども、どのOSからでもアクセス可能ながら、OSをWindowsやMacに限定しているオンラインアプリもあるので、注意が必要だ。
これからYouTubeを始める方必見!秀逸な動画編集アプリ
クロスプラットフォームアプリの利点は、ほぼオープンソースであること、つまり無料で利用できるものが多いということ。特にこれからYoutubeデビューをしようと考えている人は、動画編集においてもなるべく費用を抑えておきたいところ。
なぜなら、始めたばかりの時は収益化できるかどうかもわからない時だからだ。
そんな時には、無料のオープンソースアプリから始めてみよう。
無料だからといって、粗悪なアプリではない。むしろ、有料アプリよりも優れたアプリは数多くある。多くのクリエイターも使っている、人気のクロスプラットフォームな動画編集アプリを3つ挙げておこう。
Kdenlive
Kdenliveは、Linuxではお馴染みのKDEが開発している、クロスプラットフォームな動画編集アプリ。今や動画編集には欠かせないノンリニア編集で直感的に操作でき、初心者から上級者まで使うことができる。
他の動画編集アプリ同様、画面下のタイムラインに、映像、音声、画像を並べて1本の動画を作っていく。
このアプリの特徴は、セーブデータが MLT Multimedia Frameworkというオープンな規格のフォーマットで保存され、中身が完全なXML形式であるということ。XML (テキスト)形式であるということは、セーブデータの世代管理ができるということだ(以下ブログより引用)。
Kdenliveについて詳しく説明されているブログがあるので、以下に紹介しておきたい。
OpenShot Video Editor
個人的には、今もっとも使ってみたい動画編集アプリ。もちろん、デバイスのOSを選ばないクロスプラットフォームアプリだ。
これもKdenlive同様、直感的な操作で映像を制作していくことができ、マルチトラック対応。
機能も充実していて、こちらも初心者から上級者まで対応可能だ。
DaVinci Resolve
多くのクリエイターも推奨している動画編集アプリ。有料版もあるが、これはもう完全にプロ仕様なので、無料版でも十分過ぎるほどの機能が備わっている。
これはどちらかというと、中級者から上級者向けのアプリ。機能が充実している分、使いこなせないということにもなるので、初心者には不向きかと。
このアプリの特徴は、マルチユーザー・コラボレーション。
プロジェクトライブラリは、リアルタイムのローカル/リモート・コラボレーション用に構築されていて、Blackmagic Cloudウェブサイトでは、世界中どこからでもプロジェクトのホストやアクセスが可能という点だろう(ウェブサイトより引用)。
複数で編集作業を行う時には便利そうだ。
まとめ
今回は、画像・動画編集に絞ってLinuxで使えるアプリを紹介したが、Linuxで使えるアプリはこれだけではない。
Microsoftのブラウザー、EdgeがLinux版をリリースしたように、どのカテゴリーにおいてもLinuxを無視してアプリを開発することはできない。
余談だが、デスクトップ画面が限りなくGnomeに近い、人気のChromebookも大元はLinuxだ。
これからますます、OSを選ばないクロスプラットフォームなアプリは増えるだろう。いつまでもWindowsにしがみついている官公庁も、ドイツのシュレースヴィヒ=ホルシュタイン州を見習った方が良いと思う。
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