「お客様は神様」なのか?を真面目に考えてみた

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ショップの店員と客

客が商品を購入することで、そのお店や企業の売上となる。

当たり前のことだ。

だから、昔から「お客様は神様です」と言われ続けてきた。

しかし、本当に「お客様は神様」なのだろうか?

昨今、メディアでよく取り上げられる「モンスターカスタマー」ぶりを見聞きする限り、「神様」であるお客様も、ずいぶん行儀が悪くなったと言わざるを得ない。

このことを真面目に考えてみた結論を申せば、お客様と店又は企業は、

「契約による対等な関係」

と考えるのが、真っ当だろう。

クレーム対応で困ったとき、このことを思い出すと、対応のヒントとなるかもしれない。

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契約前はお客様ではない

筆者は、小さいながら旅行会社を経営している。

大学やセミナーなどで経営学を学んだわけではないが、今まで会社を切り盛りしてきた中で培った、独自の、また共同パートナーとの経営理念を持っている。

その中で、常に大切に考えてきたことのひとつが、「お客様とは契約による対等な関係」ということだ。

以前、そのことで同じ業界の人と意見を交わし合い、理解してもらえなかったことがある。

その会社は、旅行見積りの共同入札サイトを運営する会社だった。ユーザーが行きたい旅行の内容を投稿すると、そこに登録している複数の会社が、その要望に対して旅行見積もりを提案する。
提案された複数回答の中から、ユーザーは最も自分のニーズに合った会社を選択し、以後はその会社と旅行契約を締結する、というものだ。

筆者の会社でもいろいろなプランを提案し、そこから旅行を受注できたことは確かである。

あるとき、当社のプランに好感触をしめしたユーザーとのやり取りの中で、ユーザー側が何らかの不満を感じたようで、サイト運営会社へクレームを入れた。
ずいぶん前のことなので、そのクレーム内容までは覚えていないが、けっしてユーザーをないがしろにしたわけではないことは確かだ。だが、サイト運営会社からは、

「お客様なのだから…」

という理由で、ユーザーと折り合いをつけてほしい旨の連絡を受けた。サイト運営会社の言い分は、当社のお客様になっていないユーザーに「お客様」として対応しろ、ということだった。

そのユーザーは、まだ旅行契約前だ。当社は「そのユーザーはまだ旅行契約前で、当社のお客様ではないから、そのように対応する」とサイト運営会社に伝えた。

当社のその回答に、サイト運営会社もびっくりしていた。

サイト運営会社にとっては、そのサイトを訪れて投稿してくれるユーザーは「お客様」なのかもしれない。だが、そこに登録している旅行会社(当社)にとっては、契約に至らない限り、

「ユーザー=お客様」

ではないのだ。

結局、サイト運営会社もそのユーザーも、当社の考えを理解してもらうことはなく、契約には至らなかった。

契約後なら何でもアリか

eコマース イメージ

当社の考え方からすれば、例えば、お店に商品を見にきただけの人は「お客様」ではなく、単なる「見込み客」だ。

商品を購入するという意思を店側に提示し、契約(支払い)することによって、はじめてお客様となる。

両者の間で交わされるのは売買契約で、購入者が対価を支払ったから、売主は対価に値するもの(商品)を提供する。

もちろん、商品には「品質保証」というアフターサービスが付加される。「インチキなものは販売していませんよ〜」ということを、購入者に保証するものだ。

これを旅行に当てはめてみれば、契約内容に含まれる交通機関や宿泊機関のサービスを確実に受けることができるよう、手配することが「契約」だ。そして、確実に旅行サービスが提供され、購入者が自宅へ戻ることで、旅行契約は完了する。

そこに、もし瑕疵があれば、旅行会社はその瑕疵に対して責任を負わなければならない。その瑕疵は契約違反となるからであり、その場合、売主である旅行会社はクレームをクレームとして受けとめ、補償しなければならない。

しかし、昨今メディアで見聞きするクレームは、およそ売主(お店)になんの瑕疵もないのに、店員に土下座までさせるようなものまであると聞く。これをたまたまTwitterで見かけたのだが、明らかに売買契約の域を超えている。

おそらく、その客は昔から言われている「お客様は神様です」を水戸黄門の印籠のように出し、自分が気に入らないことがあったら、「全てお客様の言う通りにしろ」と押し付けているのだろう。想像だが、その人は多少お酒も入って、気が大きくなっているのかもしれない。

繰り返すが、購入者が商品を購入し対価を払うことで、売主は商品の品質保証をしながら提供するだけの対等な関係であり、気に入らないからといって土下座を強いることは、契約内容には含まれていない。

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お客様は神様ではなく契約者

ここまでお読みになれば、筆者の考え方も多少理解してもらえるだろう。

お客様は神様ではなく、売買契約の契約者であり、両者は対等な関係にあるということだ。「自分を下に、購入者を上に」考えることはない。

お客様の言いなりにならざるを得ないときは、それは売主になんらかの瑕疵があるということを証明していることになる。

だから、なんの落ち度もないのなら、クレームに対して堂々としていれば良い。

しかし、今はこのような場合でもSNSで勝手に誹謗中傷され、それが拡散されることがあるので、難しいところだ。

万が一、そのような事態になった時に備え、事前に対処方法を考えておくことが必要かもしれない。

筆者の会社のような、契約書が交わせる商売であれば、契約書が盾となる。そうでない商売の場合は、弁護士に相談することだ。

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