アコギにせよ、クラシックにせよ、ギターはよく手入れしていれば、ずっと弾くことができる「一生モノ」。
そのことは、なんとなくわかっているつもりでも、
- 具体的に「一生モノ」って、どんなギター?
- そもそも、ギターには寿命があるの?
と聞かれると、意外に答えに詰まるかもしれない。
モノとしても、趣味としても「一生モノ」のギターについて触れてみた。
「一生モノ」とは
そもそも、「一生モノ」とは、どんなものだろう。
ジュエリーや時計やバッグなどが、よく「一生モノ」として挙げられるが、その定義は、
- 永く使えるもの
- 安物ではないもの
というように、今まで漠然としたことしか、考えたことがなかった。
「一生モノ」は英語で、「heirloom(家宝)」、あるいは「lifetime investment(生涯の投資)」という、多少ニュアンスの違う2つの言葉で言い表される。
「heirloom(家宝)」は、文字通り家宝となるもの。よく聞かれるのが、親から子へ受け継ぐ時計や宝飾品など、モノに対する「一生モノ」。
それは、必ずしも高級でなくても良いかもしれない。
丁寧に手入れをし、ときにはリペアや部品交換をして、長く愛用する。その思いを、自分の子や孫にも受け継ぎたい。そんな気持ちを伝えていけるのが、家宝としての「一生モノ」だろう。
一方、「lifetime investment(生涯の投資)」は、自分のために役立つ体験や経験、知識や資格などを得るための、投資としての「一生モノ」。
そう考えると、ギターには、両方の意味の「一生モノ」が備わっていると思う。
ギターには「寿命」がない一生モノ
よく、「ギターの寿命はどれくらい?」といった問いがあるようだが、正直なところ、ギターには「寿命」という明確な定義はなさそうだ。
クラシックギターだと、19世紀のものが、いまだにビンテージギターとして販売されている。フラメンコギターやアコースティックギターでも、100年以上前のギターが存在する。
筆者が、暇な時にちょくちょく見ている、「Jギター」というサイトでは、楽器検索ができる。そこに出てくるビンテージギターは、ヴァイオリンの名工、ガダニーニ作のものまで掲載されている。ビンテージギターは、ネットで画像を見ているだけでも美しく、楽しい。
また、ギターには消耗品としての部品が多く、交換することで、長く使うことができる。
その代表的なものが、弦だ。
演奏頻度が高ければ高いほど、張り替え頻度も高くなる。エレキやアコギの弦は全てスチール製なので、演奏ごとに摩耗し、手の汗がついたまま放っておくと、錆びつくこともある。
だから、演奏後は必ず、ギタークロスで弦を丁寧に拭いておく。それでも一般の人で、1ヶ月に1回は替えたほうが良いとされる。
ペグ(糸巻)やフレットも、消耗品だ。
ペグは、一般の人なら滅多に交換することはないだろうが、プロの演奏家のように演奏頻度が高ければ、やがて正しくチューニングできなくなることがある。その原因となるのがペグで、そうなったら、楽器屋さんでペグを交換してもらうことが必要だ。
フレットも、演奏頻度によって摩耗したり、指板から浮き上がってしまうことがある。そうなったら、やはり楽器屋さんで、新しいフレットに打ち直してもらうことができる。
その他、ネックの反りやクラック(木部の損傷)など、さまざまな理由で、お気に入りのギターをリペアしながら、永く愛用していくから、「一生モノ」としての価値があると思うのだ。
趣味としてのギター演奏も一生モノ
「ギターは小さなオーケストラ」という言葉があるように、ギターは、さまざまな奏法を駆使し、独奏で楽曲を聞かせることができる楽器だ。
ピアノにもあるアルペジオ、マンドリンや打楽器にあるトレモロといった、メロディーにも伴奏にもなる奏法の他、ギターのボディを叩くタンボーラ、フラメンコでは定番のゴルぺなど、打楽器の役目もこなす。
それくらい、ギター演奏は奥が深い。
ちょっとやそっと練習したくらいでは、一丁前の演奏などできない。だから、長くレッスンにも通うし、よく定年後の趣味にも挙げられる。
そして、楽曲は全て、昔から弾かれているスタンダードばかり。いつの時代も愛される楽曲は、聞いていても、演奏していても心地よい。
だから、趣味としてのギターも「lifetime investment(生涯の投資)」の「一生モノ」なのだ。
個人的な話になるが、筆者がまだ会社勤めで、仕事づけで疲れていたある頃、村治香織さんのアルバムをふと聴く機会があり、心洗われたことがある。
日頃の鬱々とした気持ちが穏やかになり、柔らかいギターサウンドに惹かれて、すぐにギター教室に入った。
以来15年、一人の先生に師事し、クラシックとフラメンコの両方を教わったが、教室運営側の都合と先生の意向が合わず、それに納得がいかなかった筆者は、結局ギター教室をやめることにした。
そのことで、少しギターを弾くことから遠ざり、6年が経った。
しかし、やはり「ギターは自分の一生の趣味」と思い、古い楽譜を引っ張り出して練習を始めた。指慣らしに、
- クラシック:「Asturias (Leyenda)」
- フラメンコ:「Llora la Farruca」
を選んで、日々練習している。練習再開にしては、かなり高レベルの楽曲を選んでしまったので、悪戦苦闘中だ。
ギターの、特にクラシックギターの音色は、人間の声に近い。心落ち着かせるその音色の演奏は、「投資」とは違うが、一生つき合える趣味となるのかもしれない。
「一生モノ」なら一本でいい
気に入ったギターを何本も持っていて、なおかつ欲しくなるとすぐに新しいギターを買う人がいる。
だが、「一生モノ」のギターなら、一本で十分だ。
当ブログ内で、「長く付き合える一本を!フラメンコギターの選び方」という記事を紹介しているが、その内容は初心者向けになってしまっている。
最初は、入門用のギターでも良い。しかし、一生つき合える趣味なら、次に選ぶのは「一生モノ」のギターだ。
必ずしも、高級ギターでなくても良いが、ここに書いたように、永く愛用できるギターが見つかれば、その人は幸せだと思う。
筆者は、クラシックギターから入り、同時にフラメンコを教えていただいたので、最初は入門用のクラシックギターを購入した。しかし、次のフラメンコギターは慎重に選んだ。
そして購入したのが、コンデ・エルマノスEF-4だった。コンサートフラメンコにも、伴奏にも適しているこのフラメンコギターは、ポピュラーな曲まで弾くことができるオールラウンドなギターだ。
購入時はまだサラリーマンで、給料より高額のギターを買うには少々躊躇したが、購入してよかったと思っている。魅力あるギターは数多くあるが、だからと言って購入したいとは思わない。手にしたコンデ・エルマノスは、筆者の「一生モノ」だ。
「一生モノ」のギターで思い出すことがある。それは、ゆずの北川悠仁さんがよく弾いている、ギブソンのJ-160Eというギター。
ピッキングにより、サウンドホール周りの塗装がはげてボロボロなのに、気にせず弾いている。ジョン・レノンに憧れて購入したと言われ、デビュー当時から使っていることもあり、思い入れがあるのだろう。
プロのミュージシャンで、使うギターも、よりどりみどりのはずなのに、ひたすらこのギターを弾き続けることに、「きっと一生ものなんだろうな…」と思わずにはいられない。
あなたは、モノとしても、趣味としても「一生モノ」のギターに出会えただろうか。
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