自社のWindows7対策のためにLinuxを調べ始めて以来、様々なディストリビューションをインストールしながら書いてきた「ざっくりLinux!」シリーズは、とうとう50記事になった。
身の回りの様々な場面でも使われているLinuxは、デスクトップ用ディストリビューションだけでも星の数ほどあり、どれを選んでいいか迷うほどだ。
筆者が試してきたのはほんの一部だが、その中から「おすすめLinux」として、スペック・特徴別にまとめてみた。
「Windowsはもういらない」
「Linuxを使ってみたい」
という人に、Linuxの入口として読んでもらえれば嬉しい。
低スペック(32-bit/メモリ1GB以下)向けディストリビューション
Linuxに着目するきっかけのほとんどが、Windows7対策や「古いPCを蘇らせたい」ということからではないだろうか。パソコンの進化は日進月歩で、どんどん性能が良くなっているが、故障していない限り多少古くても使うことができる。
それなのに、まるで3年ごとに車を買い替える如く、いたずらに新しいパソコンを買わせようとする原因は、WindowsOSのサポート終了によるアップグレードだ。筆者もWindows3.1に始まり、サポートが終わるたびに新しいWindowsOSに触れてきた。半分ほどは勤めていた会社で利用しており、独立してからは自社でその対応に追われた。
新しいOS発売によってパソコンまで買い替えるのは、企業にとって相当な経費がかかる。だから、まだまだ使えるパソコンをオープンソース・ソフトウェア(OSS)を利用して使い倒そうと思うのは、自然なことだろう。それに答えるのが、Linuxだ。
前置きが長くなったが、眠っている古いパソコンにLinuxを入れて再度使うには、低スペック向けなディストリビューションがいい。古いパソコンによっては32-bit版が多いので、まずは32-bit/メモリ1GB以下でもサクサク使える軽量Linuxを以下に列挙してみた。
以下4点は、いずれも64-bit/32-bit版を用意している。
- Debian
- antiX Linux
- MX Linux Xface
- Q4OS Centaurus Trinity
中でも一推しなのは、見た目も良さげなQ4OSだ。Windows風でもあり、かなり軽量なので古いパソコンでもサクサク動く。antiXは軽量で良いのだが、若干デスクトップがスタイリッシュではなく使っていて飽きてきそうな感じだ。Debianは安定しているので、64-bit/32-bitともに長く使うのに適している。
日本で開発されたディストリビューション
インストール時から日本語環境が整っているのは、日本開発ならではだろう。以前から、LinuxのシェアとしてはUbuntu、Linux Mintなど海外発のものが主流だったが、最近は日本で開発されたディストリビューションも良いものが揃った。
- Alter Linux
- Kona Linux Ubuntu Edition
- Caramel OS(後述)
- NNLinux
- natureOS
- Vine Linux
日本で開発されたディストリビューションの良さは、日本語環境だけではない。サポート面も安心して問い合わせることができるのが強みだ。その点で、筆者一推しはAlter Linuxである。学生たちのグループで開発されたのだが、問い合わせをしても実に対応が丁寧で気持ちが良い。
NNLinuxは人気があるようだが、Alter Linuxよりもサポート面が充実していないように感じる。また、他のパソコンとのファイル共有ができないので、単体でしか使うことができないのが難点だ。
natureOSは、日本人のための国内産ディストリビューションと言えるだろう。右利き用マウスの利便性を考え、全ては画面右上から始まるように設計されているのが有難い。
老舗の日本製として知られているVine Linuxは、現在開発が進んでいないようなのでサポート面が気になるところだ。
使い慣れたWindows風ディストリビューション
筆者同様、「Windows7対策でLinuxに変えてみたい」と思った人が多いに違いない。その際、使い勝手にさほど変わりはなく、オフィスソフトもMicrosoftのオフィスソフトと互換性があるもの、と思うだろう。オフィスソフトについては、もはやMicrosoft社のものよりも優れていると思うLibreOfficeを使えば良いので、あとは使い勝手だ。
その意味で、Windowsから違和感なく移行できるディストリビューションを挙げてみた。
- Zorin OS
- Q4OS(上述)
- Linuxfx
Linuxfxはブラジル発のディストリビューションで、見た目から使い勝手までまるでWindows10というもの。試してみたかったが、無料ダウンロードができなくなり、最低10ドルかかるようになった。
「これくらいなら払ってみても…」という方は、公式サイトからダウンロードできる。
アップグレードの手間が不要!ローリングリリースのディストリビューション
「ローリングリリース」は、バージョン番号によるアップデートではなく、頻繁にマイナーアップデートを行うリリースモデルを指す。バージョン番号が変わるたびに難しいアップグレードの作業をする必要がないのが、大きな特徴だ。また、頻繁なマイナーアップデートはセキュリティ面でも安心できる。
代表的なのはDebianとArch Linuxであり、それぞれの派生ディストリビューションもそれに倣う。DistroWatchのランキングで常に上位に入る、ManjaroはArch系、MX LinuxはDebian系だ。上述の日本製Alter Linuxは、Arch Linuxをベースにしている。
一方、Linuxディストリビューションとしては老舗のopenSUSEやSolusは、それぞれ独立したディストリビューションで、パッケージ管理が独特なため、使い初めは少々戸惑うかもしれない。
- Manjaro
- Debian
- Alter Linux(上述)
- Solus
- openSUSE Tumbleweed
- MX Linux
使っていて楽しい!Mac風や美しいディストリビューション
- elementary OS
- Caramel OS
Macに寄せた、画面中央下のドックが特徴なのはelementary OSだ。また、それ以外にも全体的に美しいLinuxディストリビューションとして知られている。
その他、フランス発のVoyager Linuxも、画面中央下のドックと右上の通知センターがMac風に仕上がっている。みんな、一度はMacを使ってみたいのだろうね〜。
一方、日本製ながらポップでおしゃれなのがCaramel OS。開発者は当時高校生(今は大学生だろうか)で、若い人らしい感覚で作られている。ファイルマネージャのアイコンもキャラメル風だ。
ウイルスソフト不要!強固なセキュリティのディストリビューション
最後は、アンチウイルスソフト不要(というよりも、不完全なウイルスソフトを信用していない)強固なセキュリティのQubes OSだ。そのコンセプトは「隔離によるセキュリティ」である。
詳しくは上記記事(「Qubes OS #3 – 最強セキュリティOSのQubes OSの使い方」まである)内で説明しているが、いわばパソコン内にいくつものVirtualBoxのようなQube(コンパートメント)を作り、一つ一つが独立して動作しているということ。仮に一つがウイルスに感染しても、他のQubeに影響は及ばない。また、Qubeは簡単に作成・削除できるので、感染したQubeは削除し、また新たに作れば良い。
Qubes OSの開発チームは、アンチウイルスソフトには限界があると考えている。新しいセキュリティパッチを更新しても、日々いたちごっこだからだ。
現在、筆者が使用しているディストリビューションはこのQubes OSで、アンチウイルスソフトを入れないことの不安は一切ない。これほど信頼できるOSは、WindowsやMacはもちろん、Linuxにおいても他にないのではないだろうか。唯一、GoogleのChromebookがセキュリティをメインにしているが、その仕組みは似たところが多い。それならば、サードパーティのソフトウェアをインストールすることができる、このQubes OSの方が勝っていると感じている。
まとめ
「脱Windows」として最適なLinux。しかし、数が多いだけに選ぶだけでも大変だ。なので、
- 32ビット/1GB以下の低スペックPC向け
- 最初から日本語で使いたい人向け
- 「やっぱり見た目はWindows」という人向け
- アップグレードの手間要らず・ローリングリリース
- Macのような美しいデスクトップ
- セキュリティはバッチリのLinux
という選択基準から、実際にインストールして試したディストリビューションを紹介した。もちろん、これ以外にも人気のUbuntu、Linux Mint、Fedoraなどがあるが、これらのディストリビューションももちろん使いやすい。
Linuxディストリビューションの利点の一つは、「オープンソースで無料」であること。一つ試して「?」と思ったら、すぐに違うディストリビューションを入れ直せばいい。
思ったより、Linuxのインストールはハードルが低い。
【ざっくりLinux!のおすすめ本】
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