2週間のシチリア・アマルフィ・アブルッツォ旅行も、はや10日目。この日は、スルモーナのホテルをチェックアウトして、アブルッツォでの次の拠点、ペスカーラへ向かう日だ。
イタリアには、「イタリアの最も美しい村々」に登録された個性豊かな美しい村が各地にあり、アブルッツォにも訪れたい村がある。
そのひとつが、タリアコッツォだ。
たいていの美しい村々は交通の便が悪く、レンタカーがないと訪れることが難しい村が多い中、このタリアコッツォには駅があり、鉄道で容易に訪れることが出来る村のひとつである。
イタリアの最も美しい村々の一つ、タリアコッツォ
スルモーナ滞在最終日、タリアコッツォへ日帰りで訪れた。
次の宿泊地、ペスカーラへの移動があるので、スルモーナのホテルで夕方までスーツケースを預かってもらい、ローマ方向への列車に乗って出発。あいかわらず落書きされたままの列車だ。
普段旅行業を営む筆者が、フランスやイタリアの美しい村々にこだわるのには理由がある。
常に新しい、魅力ある町や村を訪問地として紹介しようにも、まだまだ知らない町や村はたくさんある。
そんな時、一つの指針になるのが「イタリアの最も美しい村々」協会だ。
歴史的価値があり、やみくもに町を開発することなく、中世のままの景観や家並みをかたくなに保存している村に、この称号が与えられる。その審査は、一度称号を得ながら、その選定条件から外れるとリストから外されてしまうという厳しいもの。それだけに、どこを訪れても、けっして”ハズレ”がない。
現在、アブルッツォ州には23の登録された村があり、マルケ州(28)、ウンブリア州(27)、トスカーナ州(25)、リグーリア州(24)に次いで、登録数が多い。
また、その審査基準からユネスコ世界文化遺産と重なることも多い。
近年、日本からの訪問客も多いチンクエ・テッレ(「5つの土地」という意味)のうちのヴェルナッツァは、その一つだ。反対に、永遠の観光地ヴェネツィアがあるヴェネト州は、わずか10の村しか登録されていない。
フランスもそうだが、イタリアの美しい村々には、それぞれ村名のサブタイトルとも言うべきものがあり、そして村の名前の由来がある。
「イタリアの最も美しい村々」公式サイトで、各村のサブタイトルを見るだけでも、その村がどんなものかがおおよそわかるので、興味深い。また、全ての村が画像付きで詳細を案内しているので、興味がある人は訪れてみてはいかがだろうか。
ちなみに、今回訪れたタリアコッツォのサブタイトルは、「The ancient capital of Marsica(マルシカの古都)」というそうだ。マルシカというのはイタリア中部、アブルッツォのことを指す。
また、タリアコッツォという名前の由来は、ラテン語の「talus(Cut:「切る」の意味)」と「cotium(Rock:「岩」の意味」に由来し、山を切り崩してできた村ということらしい。たしかに下の画像を見ると、その由来がよくわかる。
タリアコッツォの詳細については、自社オフィシャルブログで詳しく紹介しているので、良かったら下記を読んでみて欲しい。
タリアコッツォからペスカーラへ
朝、スルモーナを出発して、タリアコッツォを1日取材したのち、再びスルモーナへ。鉄道移動も慣れてきた。
ペスカーラ行きの列車は、夕方以降も何本かあるものの、暗くならないうちにペスカーラに到着したい。そう思い、預けておいたスーツケースを引き取りに、再びスルモーナのホテルへ。時間があまりないので、歩ける距離だがタクシーを利用した。
フロントでスーツケースを受け取ると、待たせておいたタクシーに積んで再び駅へ戻り、どうにか予定していたペスカーラ行きの列車に間に合った。フロントには、昨晩日本語で対応してくれた女性スタッフがいたのだが、十分なお別れの挨拶もせずに出てきてしまったことが、多少心残りだった。
スルモーナからペスカーラまでは1.5時間ほど、夏の夕陽が完全に暮れる前に到着できた。ペスカーラはアブルッツォの玄関口、アドリア海沿岸の大都市で、空港もある。
駅をでて、徒歩で予約していたホテルへ向かう。大通りを曲がると、ちょうど駅を出て約10分ほどで見つけられた。建物の1階には、インターネットカフェのような店が入っている。
早速、チェックインを済ませてしまおうとすると、その店の前にいたおやじたちが我々に向かって口々に何か言ってきた。どうやらそのうちの一人が片言の英語を話せるらしく、
「今はホテルのスタッフがいないから、電話をしたほうがいいよ」
と、ホテル入り口を指差して言った。
「スタッフがいない?」…どういうこと?
いわれるまま、ホテルの入り口に進むと、セキュリティでロックされた鉄の門に紙切れが貼ってあり、そこに電話番号が書いてあった。書いてある通り、その番号に電話をする。
「申し訳ない、ミスター○○○、10分くらいで行くからちょっと待っていてください」
「…OK…」
急いではいないものの、一日歩きまわって疲れていることもある。「イタリアだし、こんなこともあるだろう」と思いつつ、待っている間、1階の店の前におかれたテーブルとイスで一休みさせてもらうことにした。すると、英語を話せるおやじの一人がお決まりの質問。
「どこから来たの?」
「日本です」
「そう、この隣の緑の壁のアパートには日本人の女性が住んでいるよ」
「へえ、そう」
「いいスーツケースだね、クラシックだ」
「…ありがとう…」
なんの会話だろう?
だが、その先は会話が続かず待つこと10分、ようやく子供を連れた一人の男性が到着し、ホテルへと案内してくれた。
この人がホテルスタッフだ。子供はスタッフの子のようで、自宅から来たのか、一緒についてきたようだ。
ペスカーラの快適ホテル Bella Pescara
予約したホテルBella Pescaraは、厳密に言えばB&Bだ。
このホテルは、必要な時だけスタッフが来るようにしてあるようで、彼らは建物には常駐していないらしい(きっと近所に事務所があるのだろう)。過度に宿泊客のプライバシーを侵害することがなく、考えようによっては静かに過ごしやすいホテルだ。
入口を入るとすぐ、テーブルのおかれた狭い共有スペースと、その奥にカードキーで入る部屋が並んでいた。このカードキーで、ホテル入口の鉄の門や、ガラス戸のセキュリティーなど、全てを解除できる、ということを教わった。
部屋は、以外にも小奇麗で、3つ星クラスのホテルとして十分な設備が整っている。部屋の外には小さいながらもテラスがあり、夕涼みにちょうど良いスペースだ。
シャワーを浴びて、今日の夕食さがしに、町をぶらぶらすることにした。
駅前の大通りに近いこのホテルは、海岸沿いまでもすぐの距離なので、その辺まで歩けば何かあるだろうと思ったのだが、はたと「ここはリゾート地だった」と気づいた。
海岸沿いに立ち並ぶホテルやレストランは、やたら高そうで、なかなかリーズナブルな食事を探すことができない。
何度か行ったり来たりして、ほとほと疲れたので、テイクアウトのピザ屋でピザを購入してホテルへ戻り、部屋で夕食。
ペスカーラは3泊の予定だが、夕食に悩まされそうだ。
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