ハワイやグアムのように単純な1か所滞在の旅行なら、パッケージツアーを利用するのが最も効率が良く、特典もあって便利だろう。
ところが「行きたい国や都市が何か所もあって、そう何度も海外旅行に行けないのだからこの際一気に巡ってしまおう」と考えた時、そのすべてを網羅するにはどんな旅行スタイルが良いだろうか?
筆者が運営している旅行会社では、行きたいとおりに自由な旅を提供するため、オーダーメイド型の旅行プランを案内している。上記のような希望があるときには、オーダーメイド型の旅行が一番だからだ。
しかし、自分でオーダーメイドの旅行を一から組み立て、本当に満足できる旅行をするのはなかなか難しい。手っ取り早いのは、希望を全部旅行会社に伝えて、プランを作ってもらうことだ。
近年、ネットで航空券やホテル、さらには空港送迎や現地発着の日本語ガイド付観光ツアーまで自分で申し込むことが出来るようになった。それを組み合わせれば、それが「自分だけ」のオーダーメイドの旅行になる。
そして、その時基本になるのが海外航空券だ。今回は海外航空券について、知っていれば得することをあれこれ書いてみようと思う。
座る席は同じなのに多すぎる「予約クラス」
はじめに、大半の方が利用するのはファーストクラスやビジネスクラスではなく、ツアーでも利用するエコノミークラスだろう。
時期によっては、ヨーロッパ往復で5万円程度の航空運賃がある現在では、ファーストクラスやビジネスクラスを利用する人は、体調に不安がある人か、あるいは無駄にお金が有り余っている人かもしれない。もちろんそうでない人もいるので、最初に断っておく。
さて、そのエコノミークラスだが、実際に機内に入って座る席は単に「エコノミークラス」としか案内されない。
しかし、実際は設定される条件、運賃によってかなり多くの「予約クラス」というものがある。機内で座るときは「座席クラス」、予約するときは「予約クラス」、だがどちらも同じエコノミークラスだ。
ある航空会社のある路線の空き状況を、旅行会社だけが使用できる航空端末で調べてみる。すると、この路線の予約クラスには、
- ファーストクラス:2つの予約クラス
- ビジネスクラス:4つの予約クラス
- プレミアム・エコノミークラス:4つの予約クラス
- エコノミークラス:12の予約クラス
のように、かなり多くの予約クラスがある。
ひとたび機内に入ってしまえば、前方からファースト、ビジネス、プレミアム・エコノミー、エコノミークラスの4クラスにしか分かれていない。特にエコノミークラスは、12の予約クラスがある。
ここがポイントで、「予約クラス」は運賃種別を決定するためのものだということ。
運賃種別とは、時期、発券条件、旅行形態による条件、搭乗する人(障害者割引や、アメリカではミリタリー運賃というものがある)の条件など、さまざまな条件によって運賃を分けているということ。
例えば、上述のある航空会社では、設定されている合計22の予約クラスによって、さらに82もの運賃種別に分かれている。そしてそのうちの大半が、時期や発券条件によって分かれているものだ。
航空会社を限定していないので、実際に書いてみよう。ある航空会社のエコノミークラスの12クラスとは、
G、O、Q、N、S、V、L、M、K、H、B、Y
だ。これは運賃種別によってこのように並べられており、左から右に行くにつれて、運賃は高くなるが航空券購入条件やキャンセル条件などは緩くなっていく。そして、左側の予約クラスほど、数は少ない。
これはどういうことか?
答えは、運賃がより安い左側の予約クラスほど、数に限りがある、ということ、つまり「早い者勝ち」の予約クラスだ。
しかし、同時にリスクもある。安い運賃ほど制限が多く、航空会社によっては予約・発券後の払い戻しは一切不可、というものまである。安いには安いなりの理由があるのだ。
とはいえ、絶対に行く旅行であれば、安い航空券のほうが良いに決まっている。制限に左右されることなくできる旅行であれば、何ら問題はない。機内食に差が出る、なんてことは、あり得ないのだ。
海外航空券にもはや「キャンセル待ち」は通用しない
そして、この数多くある「予約クラス」が、以前は当たり前のように飛び交っていた「キャンセル待ち」という概念をなくしてしまった。
業界では「Waiting Listに載せる」というが、これももはや過去の言葉になりつつある。
筆者が初めて航空端末に携わった、1980年代からおよそ2000年初めまでは、キャンセル待ちという概念がまだ残っていた。
残席がゼロの時はWait Listに載せるべく、ステイタスを”WL”にして予約記録を作成する。そして、航空会社にConfirm(航空端末でのステイタスは”HK”)してもらうよう、予約記録の中にメッセージを加えて送る。
何らかのシステムにより、一時的に”WL”だったステイタスは、数秒で”HK”のレスポンスが来ることもあるが、発券期限ぎりぎりまでステイタスが変わらないこともしばしば。そのような時は、お客様に代替の便や航空会社を案内せざるを得ない。
このように、航空会社と予約作成者との間にあったのが「キャンセル待ち」だ。
だが2005~2006年頃、航空会社はこぞってIT運賃をやめてPEX運賃に切り替えていった。
早い話、IT運賃では航空会社の利益は減るばかり、だからすぐに発券してもらえるPEX運賃の方が収益が上がるということだ。そして、PEX運賃を構成する基本となるものが「予約クラス」である。
上述の、ある航空会社のエコノミークラスにおける12の予約クラスを振り返ってみよう。
最も安い左側の予約クラスの残席がゼロだったとする。すると旅行会社スタッフは、その予約クラスにキャンセル待ちのステイタス”WL”で、予約記録を作成しようとする。
しかし、現在ではほとんどの航空会社が「Wait List Closed」とレスポンスを返してくる。
つまり、「キャンセル待ちに入りませんよ~」というメッセージだ。
しかたなく、その上のクラスで予約し記録をクロージングする。当然、運賃は当初見積もっていたものより若干上がる。
その上のクラスも残席ゼロなら、そのまた上のクラス、というように、航空会社はステイタス”WL”を作らせない仕組みを作ったのだ。
空き状況は日々刻々と変わっている
このことは、ネット上に溢れる航空券検索サイトでも同じことで、システムの裏側では航空端末と同じことが起こっていると考えてよい。
キャンセル待ちに入らなければ、次に安い運賃ですぐに予約することが、少しでも得策というわけである。
このようなことが世界中で同時に毎日起こっているのだから、ついさっきまで残席があった予約クラスが、ほんの数秒で残席ゼロになることだってある。
見出しの通り、航空座席状況の「空き状況は日々刻々と変わっている」のだ。
そして、これはなにを意味するか?
航空座席は搭乗日の330日前から予約をすることが出来る。だから、旅行を計画したら出来るだけ早く予約・発券(購入)したほうが少しでも安くなる、ということだ。
上述の通り、エコノミークラスにおける予約クラスは安い順に満席になっていく。そしてひとたび残席ゼロになれば、キャンセル待ちを受けてもらうことが出来ず、それより高い運賃種別の予約クラスで予約することになる。
これを避けるためには、出来るだけ早く航空座席を予約することだ。
まとめ
航空券及び予約についてのしくみがわかっていれば、おのずと早め早めに予約することが必須ということが良くお分かり頂けると思う。
ネットで航空券を購入するときも同じこと、旅行の計画が決まったらまず航空券を予約しよう。
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